泌尿器科
性感染症(性病)
「性感染症」とは、性行為などによって感染する病気のことです。以前は「性病」と呼ばれていましたが、法改正により現在は「性感染症」、あるいは「STD」(Sexually Transmitted Diseases)、「STI」(Sexually Transmitted Infections)と呼ばれています。
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尿道炎〈淋菌性尿道炎、クラミジア性尿道炎、非淋菌性非クラミジア性尿道炎(マイコプラズマジェニタリウム、膣トリコモナス)〉
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尖圭コンジローマ
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性器ヘルペス
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梅毒
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AIDS
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B型肝炎・C型肝炎
性感染症検査にあたって
◎当日検査は行っておりません。検査結果がでにるには1週間ほどかかります。
◎結果によっては治療等が必要になることもあるため、電話での結果の説明は行っておりません。直接の受診をお願いいたします。
診療費について
性感染治療は、基本的には保険診療で行っております。ただし検査・治療内容によっては、自費診療となる場合がございます。自費診療となる場合は適宜ご説明をさせて頂きます。性感染症検査の自費検査料金は下からご確認ください。
尿道炎
①淋菌性尿道炎
淋菌性尿道炎は性行為の後、3~7日の潜伏期間を経て発症します。主な症状は排尿時痛、尿道痛、尿道の出口の発赤およびドロッとした尿道からの分泌液などが出現します。クラミジア感染と比べると症状は強いです。
〔治療〕
尿検査を行った上で、抗生剤での治療を行います。淋菌は抗生剤の耐性菌が増えていることもあり、注射での治療が推奨されております。
淋菌性尿道炎とクラミジア性尿道炎の合併感染も多く、下記のクラミジア感染治療も同時に行う場合があります。
②クラミジア性尿道炎
クラミジア尿道炎は性行為の後、1~3週間ほどの潜伏期間を経て発症します。主な症状は尿道掻痒感、不快感などで、淋菌感染と比べると症状は弱いです。尿道分泌液に関しては淋菌感染と比較するとサラッとした性状となります。
〔治療〕
尿検査を行った上で、抗生剤での治療を行います。クラミジア尿道炎単独であれば、抗生剤の内服治療となりますが、淋菌性尿道炎、クラミジア尿道炎の合併感染も多く、上記の淋菌感染治療も同時に行う場合があります。
③非淋菌性非クラミジア性尿道炎
(マイコプラズマジェニタリウム、膣トリコモナス等)
淋菌、クラミジア以外の原因菌、ウイルスにより尿道炎を発症すると考えられています。潜伏期間、自覚症状は原因菌、ウイルス等により多様な経過をとると考えられています。
非淋菌性非クラミジア性尿道炎の原因菌のなかでマイコプラズマジェニタリウム、膣トリコモナスは病原性があり、マイコプラズマジェニタリウムは特に耐性化(特定の抗生剤の効果が乏しい)が問題となっています。
マイコプラズマジェニタリウム、膣トリコモナスについては、感染が疑わしい場合に検査をさせて頂きます。
〔治療〕
初回治療としては、クラミジア性尿道炎に準じた治療となりますが、経過や尿検査の結果などで追加の治療を行う場合もあります。
尿道炎検査について
保険診療内で行う検査では、淋菌、クラミジアの検査となりますが、経過によっては保険診療内でマイコプラズマジェニタリウム、膣トリコモナスの検査も行います。他自費検査となりますが、一部の尿道炎検査も行うこともできます。
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パートナーの方についても注意が必要です。例え症状が出ていなくても、感染している可能性がありますので、パートナーの方も検査を受けましょう。感染していれば症状がなくとも治療が必要ですので、受診を勧めてください。
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他の性感染症の混合感染の可能性もあります。感染チェックをお勧めさせて頂いております。
女性のクラミジア、淋菌感染検査をご希望の方へ
男性では尿道炎症状として、排尿時の違和感、痛み、膿性の分泌物の出現等の自覚症状を認める場合はありますが、女性では症状が乏しい場合があります。女性では帯下の増加等の自覚症状を認める場合もありますが、無症状の場合もあります。
そのため気が付かない場合もありますが、感染の蔓延、将来的な不妊症の発症のリスクを考慮すると、早期の診断、治療が望まれます。
女性の方の診断・治療
当院では女性でも、尿検体でのクラミジア、淋菌感染症のPCR検査による診断、治療を行っております。
基本的には保険診療内で検査、治療を行いますが、自費診療となる場合もあります。詳細に関しては診察時に御説明させて頂きます。
女性での尿検体による淋菌感染症に対するPCR検査は子宮頸管からの採取と同程度の精度を示すと考えておりますが、クラミジア感染に関しては、尿検体でのPCR検査は、子宮頸管からの採取と比較して、やや精度が劣る可能性があります。
マイコプラズマジェニタリウム、膣トリコモナスの保険診療での検査についてはクラミジア感染、淋菌感染が否定的であった場合に保険診療内で検査を行うことができます。
内診での診察は行っておりませんので、尿検体での検査にて評価が困難な場合に関しては婦人科へのご紹介等をさせて頂きます。
尖圭コンジローマ
陰茎にできものがでたら、尖圭コンジローマを疑います。尖圭コンジローマはヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus;HPV)感染で起こり、陰茎(時に尿道の中)にできもの(疣贅)ができます。性行為の後、1~6か月の潜伏期間を経て発症します。できものは多発し、徐々に大きくなります。
診断は視診で行います。
〔治療〕
治療は塗り薬、凍結療法、切除術などを行います。
(当院では凍結療法、手術療法は施行しておりません。ご希望の患者様についてはご紹介をさせて頂きます。)
○パートナーの方についても注意が必要です。例え症状が出ていなくても、感染している可能性がありますので、パートナーの方も検査を受けましょう。感染していれば症状がなくとも治療が必要ですので、受診を勧めてください。
○他の性感染症の混合感染の可能性もあります。感染チェックをお勧めさせて頂いております。
性器ヘルペス
陰茎にかゆみ、水疱、潰瘍形成等の症状があれば性器ヘルペスの発症を疑います。
性行為後の2~10日の潜伏期間を経て陰茎に病変が出現します。(感染したウイルスが初発の症状が乏しく、しばらくした後に症状が現れる場合もあります。)症状出現後1週間前後で最も症状が強くなります。
陰茎の症状発症に伴い、足の付け根のリンパ節が腫れたり、尿道からの分泌物がみられることもあります。
性器ヘルペスは再発することが多く、再発時は同様の症状が出現します。再発時は最初に症状が出現した時よりも症状は軽いですが、全身倦怠感、足の違和感などの症状が出現する場合があります。
〔治療〕
治療はウイルス感染ですので、抗ヘルペスウイルス薬を使用します。
○パートナーの方についても注意が必要です。例え症状が出ていなくても感染している可能性がありますので、パートナーの方も検査を受けましょう。感染していれば症状がなくとも治療が必要ですので、受診を勧めてください。
○他の性感染症の混合感染の可能性もあります。感染チェックをお勧めさせて頂いております。
梅毒
感染後、3週間前後で、陰茎に初期硬結と呼ばれる硬結が出現します。やがて初期硬結は盛り上がり、中心に潰瘍を形成して、硬性下疳と呼ばれる状態となります。(この状態を第1期といいます。)
初期硬結、硬性下疳は放置しても2~3週間で消退しますが、約3か月後に全身の皮膚、粘膜、臓器に多彩な症状を示します。(この状態を第2期といいます。)
その後さらに進行すると、ゴム腫、神経梅毒、大動脈瘤といった病気を発症しますが、このような経過は適切な治療を行えば発症しないため、現在ではほとんどみられません。
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus HIV)感染が同時に起きている場合もあり、その場合は上記経過と異なり、急速に進行する可能性があります。
診断は血液検査で行います。梅毒には症状を示さない期間もありますが、自覚症状がなくとも治療が必要な場合があり、気になること、心配なことがあれば検査することをお勧めします。
〔治療〕
治療は抗生剤の内服で行います。抗生剤はペニシリン系の薬剤を使用しますが、ペニシリンアレルギーの方は、他の抗生剤を使用します。
抗生剤の服用期間は状態によって異なります。抗生剤開始後、39度の発熱、全身倦怠感、悪寒、筋肉痛、発疹の増悪がみられることがありますが、薬の副作用でなく、治療により原因菌が破壊されたことによる症状ですので心配はいりません。
治療後は効果判定のために数回の通院、採血を行うことが必要となります。
○パートナーの方についても注意が必要です。例え症状が出ていなくても感染している可能性がありますので、パートナーの方も検査を受けましょう。感染していれば症状がなくとも治療が必要ですので、受診を勧めてください。
○他の性感染症の混合感染の可能性もあります。感染チェックをお勧めさせて頂いております。(特に梅毒に感染している方は、HIV感染を併発している可能性があります。)
AIDS
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus HIV)が原因により発症します。
HIV感染後、2~6週間に初感染症状として、発熱、咽頭炎、皮疹等の症状が出現します。その後数年~十数年の無症候期(症状を示さない期間)を経て、免疫能が落ちてきた状態となるとAIDSを発症します。
HIV感染症に対する治療は目覚ましく進歩しております。HIV伝播の予防も含めて、早期の診断、加療が望まれます。
梅毒等の同時感染例も多く、性感染症に感染している方、感染した経験がある方には感染チェックをお勧めしております。
B型肝炎・C型肝炎
① B型肝炎
B型肝炎はB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus HBV)が感染することが原因となります。HBVは注射器の使い回しなどの血液を介して感染することが知られておりますが、性行為が原因となり感染する場合もあります。同性間性行為だけでなく、異性間性行為でも感染の可能性はあります。性行為後の2~6週後にHBVの抗原が陽性化すると言われております。感染後は初期に急性肝炎といった倦怠感等の症状が出現する可能性があり、長期的には肝硬変、肝癌が発症する可能性があります。
当院ではHBV抗原の検査をしております。性感染症に感染された方にはお勧めさせて頂く場合があります。
② C型肝炎
C型肝炎はC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus HCV)が感染することが原因となります。HCVもHBV同様に血液を介して感染することが知られておりますが、性交渉により感染する場合もあります。HCVが感染した場合は、2~3か月で急性の肝障害を起こす可能性があります。長期的には肝硬変、肝癌が発症する可能性があります。
当院ではHCV抗体の検査をしております。性感染症に感染された方にはお勧めさせて頂く場合があります。
参考:日本性感染症学会雑誌 性感染症 診断・治療ガイドライン2016.国際文献社,東京,2016.
性感染症検査の自費検査料金
下記の項目は、基本料として "免疫学的判断料 2,970円"(採血、処置料込み)に加えて、各費用を合計したものが検査費となります。
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HIV抗原抗体:1,980円(税込)
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HBs抗原検査:770円(税込)
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HCv抗体検査:1,980円(税込)
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単純ヘルペスウイルス抗体検査:3,300円(税込)
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梅毒定量(RPR+TPHA):1,760円(税込)
例)HIV検査と梅毒定量検査を行う場合 ・・・2,970円+(1,980円+1,760円)=6,710円
下記の尿道炎関連の項目は、基本料はなく下記金額のみとなります。
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淋菌クラミジア同時核酸検出(尿検査):7,260円(税込)
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淋菌クラミジア同時核酸検出(咽頭うがい液):7,260円(税込)
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尿道炎マイコプラズマ+トリコモナス検査:7,810円(税込)